建物は八角・三匝(さんそう)の階堂で、堂内の回廊は往路と復路が交わることのない二重螺旋構造になっています。この螺旋構造は、仏さまの眉間にある白い毛=白毫(びゃくごう)の象徴です。
仏さまは白毫から智慧と慈悲による救いの光明を放つことから、これを大正大学の建学の理念である「智慧と慈悲の実践」に重ねて具象化したものでもあります。
「いのり」と「希望」の街「巣鴨」にふさわしい仏教文化施設として、地域の皆さまや参拝に来られた方々が仏教精神に気軽に触れていただける地域交流の場となることを目指します。
1階に不動明王(ふどうみょうおう)の従者である制吒迦童子(せいたかどうじ)を祀り、
頂上階にご本尊である聖観世音菩薩(しょうかんぜおんぼさつ)=鴨台観音を安置しています。
頂上階に安置されているのが、「すがも鴨台観音」です。
聖観世音菩薩(しょうかんぜおんぼさつ)は、日本では「観音さま」と呼ばれて親しまれています。あらゆる人々の苦を取り除き、願いを叶えるために、三十三のお姿に変身して私たちを救ってくださることから、古くから現世利益(げんぜりやく)の菩薩として広く信仰を集めています。地域の方からの要望もあり、「すがも鴨台観音」として、地域の平安と発展、参拝者の健康と幸福を願って造立しました。
凛々しく観音堂の入り口をお守りし、参拝者をお迎えしているのが制吒迦童子です。矜羯羅童子(こんがらどうじ)とともに不動明王(ふどうみょうおう)にお仕えする脇侍で、この三体で不動三尊と称されます。
鴨台さざえ堂にお祀りした制吒迦童子は平安時代後期の作と伝えられ、特別寄託(個人蔵)を受け安置されたものです。
鴨台観音の背後には日本画の世界的大家である千住博(せんじゅひろし)画伯による「滝」の壁画が、下り階段の壁面には色彩が施された「色滝」が飾られています。繊細かつ壮大な滝の絵に私たちの心身も浄められることでしょう。
往路の上り階段の壁面には、17文字の梵字が書かれています。これは『般若心経』の真言「ギャーテー ギャーテー ハーラ ギャーテー ハラソウギャーテー ボージ ソワカ」 (往ける者よ、往ける者よ、彼岸に往ける者よ、彼岸に全く往ける者よ、さとりよ、幸あれ=中村・紀野訳)で、彼岸に到った仏さまを讃えるものです。 この階段を上がることで、般若心経を読誦したのと同じ功徳が得られます。
大正大学「すがも鴨台観音堂」に入った瞬間に香るのは、世界的なブランドの香りを手掛ける調香師 CHRISTOPHE LAUDAMIEL(クリストフ・ロダミエル)が日本画からインスパイアされて調香した香り“NIHONGA”です。香道にも使用されている香料が調香された香りは、神聖な空間に入る前に心を整える手助けをしてくれます。
また、“KooNe”というハイレゾリューションを利用した空間音響によって、地上からご本尊が祀られている最上階へと上がる過程で、「波」「川」「森」と順番に自然界の要素を感じることができるようになっています。
大正大学南門の旧中山道に面して「種子地蔵尊」(地蔵菩薩)の石像が建立され、2022年5月14日に開眼式(かいげんしき)が行われました。地蔵菩薩とは釈尊入滅後、弥勒菩薩が仏となってこの世に登場するまでの56億7000万年の間、この五濁悪世(ごじょくあくせ)にあって六道の衆生を救済するという慈悲深い菩薩として信仰されています。ふつうは僧形で錫杖と宝珠を持っていますが、それは親しみやすい姿で人々に接し救っていこうという地蔵菩薩の本願によるからです。六道の救済というところから寺院の入り口などに六地蔵が祀られていたり、街道沿いに地蔵像が建てられているのをよく見かけます。
ところで大正大学の種子地蔵は、植木鉢を持っています。それは本学の南門前を通る旧中山道が、かつて「種子屋通り」と呼ばれていたことに因みます。日本橋から約6kmに位置するこの巣鴨や滝野川辺りは、大都市江戸への野菜の供給地として知られていました。中山道を往来する旅人の中には、この付近の農家の庭先などで見慣れない野菜を見かけると、国元で栽培しようとして種子を欲しがる人も多く、やがては農家の副業として種子を販売するようになりました。そしてこの付近には種子屋が軒を連ね、種子や野菜の一大販売センターとなり、日本の農業の発展にも貢献しました。
種子地蔵の持っている植木鉢は、このような種子屋通りの歴史を顕彰するとともに、街道や地域および本学の安泰と発展、さらには野菜穀物の豊作を祈願する種子地蔵尊の誓願を象徴しています。開眼式の折には伝統の江戸野菜の種子を植えました。
また「種」は一粒の種子をまけば、やがてその一万倍もの粒となることから、わずかなものから非常に多くの利益をあげることの譬えとして、一粒万倍(いちりゅうまんばい)といわれ、伝統的な「暦」に見られる「一粒万倍日」は、心機一転して新事業に挑戦するには佳日とされます。本学では、巣鴨地域を「街なかキャンパス」として、ここを拠点に社会地域貢献活動や新たなテーマを見出してチャレンジする学生を支援し、育成していく取り組みを始めています。この一粒万倍のように、種子地蔵尊の建立にはチャレンジする人々を温かく見守り、成功を祈るという思いも込められています。
なお種子地蔵のお姿は本学表現学部の榎本了壱教授のデザインによるものです。優しいお顔がとても印象的です。また旧中山道をずっと北に向かうと信州に入ります。仏教学部の塩入法道教授は信濃国分寺の住職もしていますので、このご縁で開眼式の導師を務めてもらい今後も種子地蔵をお守りしていただくことになりました。
大乗仏教の精神を建学の理念とする大正大学では、宗教教育や関連する諸行事がさまざまな形で行われています。仏教を身近に体験できる機会となっていますので、ぜひご参加ください。
お釈迦様の生誕を祝う年中行事として毎年5月に開催しています。大学構内や周辺の地域を四季折々の花で飾ることで巣鴨の街並みに彩りを添え、地域の皆様の幸せを願う法要を勤めます。
仏教の開祖であるお釈迦様を偲ぶと共に、大正大学の関係物故者の追悼法要として毎年6月に行っています。
大正期に行われていた「魂祭(たままつり)」を起源とし、毎年7月に開催しています。授業の一環として大学生が企画・運営する盆踊りは全国でもめずらしく、近年では「巣鴨三大盆踊り」の一つと称され、二日間で1万人を超える方が来場します。
巣鴨は江戸時代から明治初期にかけて菊づくりが盛んで、「巣鴨の菊」として江戸庶民に愛されました。そんな歴史を後世へと継承する行事として毎年11月に地域住民が中心となって開催しています。大正大学も会場の一つとして鴨台さざえ堂に様々な菊を展示するほか、旧中山道がかつて「種子屋通り」と呼ばれていたことに因んだ特別法要も行います。
お釈迦様が悟りを開かれたことを讃えて執り行われる法要です。授業の一環として仏教学科の学生が主体となって企画・運営し、毎年12月に開催されます。学生による法要や、巣鴨地蔵通り商店街・庚申塚商栄会を厳かに練り歩く「お練り」を行うほか、大学構内でも来場者への乳粥の提供やイベントが実施されます。
開講期間中の毎週水曜日の昼休みに、鴨台さざえ堂前で法要を行う行事です。
大正大学の設立四宗派(天台宗、真言宗豊山派、真言宗智山派、浄土宗)及び時宗の学生が持ち回りで担当します。法要には、大正大学独自の「大正大学勤行式」を用います。
東京都豊島区西巣鴨3-20-1 大正大学内(11号館)